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映画

動体視力の限界「ボーン・アルティメイタム」

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試写でちょっと前に見たのだが
正味110分。ハイテンションに痺れる映画。
「キングダム」もコンパクトにまとまった
アクション(&ポリティカル)映画だったが
本作はユニバーサルのロゴの後から常にギアはトップ状態。
前2作見て無い人には非常に入りにくいのが難点だが
とにかくCGによる物量に頼らず
主人公の超人的な判断と戦闘力を
ジョン・パウエルの無機質なリズムを刻むスコアと
異常なカット数の積み重ねのリズムのシンクロは神がかっている。
見ている側の鼓動までコントロールされるような。

先に言ってしまえば、本作にはドラマは無い。
「スプレマシー」後の決着に終止する。
その結末までのブレの無さがストイックすぎる位。
スパイ小説を映画で…という旨味には駆けるが
映画ならではの出来る事を突きつめるのは気持ちがいい。


場面によっては、カットを細かく割り過ぎるのが仇になり
接近戦の格闘等は、何がなんだか分からず決着してしまうなど
ディテールにやや懲り過ぎた感もなくはない。
実際、劇場で前の方で見たら酔ってしまいそうになるだろう。

ただ、並のこのような演出とは違うのは
振り回すだけでなく、手元から望遠までの
様々な距離感を「必要」に応じて切り替えている事。
無駄に大きな動きをしているわけではないので
それにしっかり意味がある。
1つのセリフの代わりに、1つのカット。
追っ手の車を、自らの車を使い事故を誘発させ
柱に激突させる前に、シートベルトを一瞬で身体に巻き付け
ショック体制を取る…なんてシーンが
ほんの2.3秒で描かれる。
その積み重ねが数千になり本作の115分。
これはのちのDVD等になった時
何度も鑑賞する事に耐えられる説得力がある。


本作のエンドクレジットは、最近の映画で1.2を争うくらい格好いい。
ひと昔流行った、カイル・クパーやそれのフォロワーとちがう
スマートさと、グラフィカルな完成度の高さに感動。
(あとで調べたら『キングダム』のオープニングと同じ所だった)


湿っぽさは微塵もなく、自分を取り戻すために
知力と体力を十二分に使って、突き進むボーン。
簡潔なエピローグと、その後のナレーション等がない
あまりに清い締め方に、70年代のアクションを思い起こさせた。
「あのあとどうなった?」なんて幾つもの選択肢があって当然。
そこまで描くのは野暮であり
想像力と観賞後の話題まで奪ってしまう。
シリーズが好きなら是非の快作。
ただ、ドラマは本当にない。
「スプレマシー」とセットで1本か?
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by suzuki-ri | 2007-11-22 14:22 | 映画 | Comments(0)

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