●本作はスクリーンでは2KのIMAXデジタルで見て以来になる。
4K UHDは輸入盤をモニターリファレンスとして主に使っていた。
冒頭のシーンから主役の2人の距離が近くなるところまでは
見ていてとても映画を見ている多幸感があるのだが、それがお互いの道を
模索していく件でどうもついていけない。
別に別れる物語が……ではなく、ミュージカル映画としての面白さが
ただでさえ緩いつくりなのに、話のベタさと相まって近年のアカデミー作品で
もっともひどい作品だと思っている『アーティスト』にも感じる「やってやっている感」が鼻についたのだ。
●本作の作品のうんぬんはここまで。
で、ドルビーシネマで見た時の印象は冒頭からIMAXとは違う。本作は暗転して画面が切り替わるシーンが多いが
もうこれはドルビーシネマのデモのような、真っ暗になってからの映像の広がりは
まさに夢見た世界が眼前に広がる快感を体感できる。
あと、本作はカグレーディングを結構極端にしているのだが
シーンごろのキーになる色合いの引き立ちが、饒舌すぎるくらいにドルビーシネマ版はわかる。
あと、上の写真のような薄暗い中に表情がほんのり見える場面も多く
IMAXでは全体明るく影が浮いてしまい、その抽象化されたシルエットの画面も
ドルビーシネマではしっかり影としてツブしているものと、ちゃんと観客に表情を見せるものの
レイヤーがより豊かになっている。
アナモフィックレンズのフレアも時にまぶしく、綺麗なブルーの横切るラインの動きは
クラシック作品のような絶妙な質感の味付けになっている。
●サランド感はもともと音が縦横無尽にうごくような作品でもないか……と思っていたら
フロント重視なつくりではあるものの、冒頭の視点が変わることに感じられる
周りの音の位置の変化が目まぐるしい。そして本作の一番ファンタジーなシーン『プラネタリウム』では
全体の音の高さがふわっと上がる感じはIMAXより明らかに優っている。
ピアノの響きもするどく、楽器類のしっかり聞かせたい音
そうでなくやや皮肉まじりのエレクトリックなチープに聞かせるサウンドの差のメリハリも良い。
なによりIMAXでは画面にくらべて弱いなぁ……と感じていた2人の歌声
とくにゴズリングのややこもったような抑えた歌声の、受けの魅力が上がったように感じる。
●個人的にはこのドルビーシネマは本作が好きな方にはおすすめできるし
最近のヒットした音楽もの(ボヘミアン…とか)より、画面と音の仕上がりの
本来のバランスを届けてくれたように感じる。
だからといって私のように、ストーリーには色々思う人には……かもしれないが
本作の夢をつかむために目指すことで、失ったものがあっても
その夢を掴んだことは正しかったという、以前よりポジティブな感想になったのは
自分でも再見して良かったところだ。
by suzuki-ri
| 2021-01-18 12:11
| 映画
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