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映画

『ガメラ 大怪獣空中決戦』をMOVIXさいたま・ドルビーシネマで鑑賞。金子修介監督の素晴らしさを再確認など。

●来年の1/28に4K UHD/BDで発売される金子修介+樋口真嗣の「平成ガメラ」が、ドルビーシネマで限定公開されたので鑑賞してきた。
『ガメラ 大怪獣空中決戦』をMOVIXさいたま・ドルビーシネマで鑑賞。金子修介監督の素晴らしさを再確認など。_b0020749_11101456.png
25年前の作品。中山忍さんは今もお美しいが
本作の誠実ながら行動力あるキャラは最高だ。
『ガメラ 大怪獣空中決戦』をMOVIXさいたま・ドルビーシネマで鑑賞。金子修介監督の素晴らしさを再確認など。_b0020749_11122693.jpg
入場記念で35mmのフィルム切り出し。
私のは吊り橋でギャオスと闘うガメラ。

●まず先に書きたいこと。これはツイッターなどで呟いたことだが
 私は本作が公開された1995年にこれを劇場で見られなかった。
 この年は阪神淡路大震災やオウムの事件などがあり、私は前年から患っていた
 ギランバレー症候群(これが当時なかなかわかるまで時間がかかった)で
 長期間入院しており、見舞いにきてくれた方からの絶賛を聞いていて劇場で見たくて仕方がなかったが
 残念無ことに見られたのは退院後にレンタルビデオ。

 その時は確かに面白かったのだが「劇場で見たかったな……」だったので、正直100%楽しめたとは言えなかった。

 それが今回ドルビーシネマという、最高クオリティの環境で見られる……それも初見の劇場がこの環境なのがとても嬉しかった。

 MOVIXさいたまでは私は前ブロックの最後列fの中央付近で見たが、その後ろのブロックはほぼ満席。
 それも男女比や年齢も良い意味でごちゃごちゃ。「シンゴジラ」のヒット中のような時を思い出した。
 残念ながら『ガメラ 大怪獣空中決戦』は大ヒットまで行っていなく、当時も映画ファンからは絶賛だったのに
 2、3を見た時も偏りがあったが、今回のこの客層を見ると観客の見る目やリテラシーが変わってきたのかなと。


●ドルビーシネマは場所によってスクリーンの比率が若干違うが、さいたまはシネスコなので
 ビスタの本作は左右に黒帯がつく。ただこれもドルビーシネマの深い黒のなかでは目立たないので
 キレいなビスタの映像が眼前に浮かび上がるのがとても心地よい。

 正直いままで夜間シーンは黒ツブれしていたところ。富士山の麓などは特には厳しかったが
 今回のドルビーシネマ盤はこの夜のキレ味が素晴らしい。リッチブラックの中に浮かび上がる青い輪郭。
 そして爆発時の閃光の眩しさ。まるで劇場でフラッシュと焚いたような眩しさ。そして炎のピンクがかった色などが本当に綺麗。

 ハリウッド作品でも夜間シーンで厳しい作品が多いが、今回の『ガメラ』ドルビーシネマ盤はその弱点を完全に補っている。

 日常のシーンのやや青みがかった照明も綺麗だが、やはり一番良かったのは東京タワーの上に降り立った
 ギャオスをシルエットにしたシーン。黒にツブレルのではなくうっすら浮かぶディテールと
 屋外セットならではの空のリアルな雲や太陽光が、劇場の目の前に現物があるように感じた。


●当時の撮影技術などもあり、どうしても時代感や合成のアラは出てしまうが
 それでも屋外セットに作ったミニチュアの精巧さと、それを破壊した時の破片や火柱などは
 CGで表現したものより4kになった時に現実的な重さがしっかり見られる。
 これは2、3より1作目がミニチュア比率が多い1作目ならではの味わいだろう。


●音声は鮮明ながらもサラウンド感は最初は薄く感じられたが、これも計算なのか序盤は往年の怪獣映画的な
 良い意味で大味な広がりから、後半にいくにつれ上空の高さを感じる明瞭なサラウンド感と
 座っている椅子を震わせるような重低音の響きを感じられた。

 ヘリが大量にホバリングする場面はまるで劇場の外で飛んでいるような素晴らしい距離感もあった。

 セリフの聞き取りやすさも良い。早口になりすぎず、やや説明セリフ的であっても
 雰囲気でだぁーーと喚いたりではなく、役者の感情が有機的に伝わってくる。
 

●驚くのが本作は95分。正味1時間半なのだがギャレスの『ゴジラ』や『シンゴジラ』より30分以上短い尺で
 駆け足になりすぎず、適度にタメを作りながら見せ場もしっかり用意してくれている。
 この編集テンポも素晴らしいのだが、今回再見して金子修介監督のドラマパートの素晴らしさを感じた。

 このテの作品は「トリックスター」な現場をかき乱すキャラや、主人公の行動を妨害したりして
 最後はひどい死に方をするなどの「不快キャラ」を出す場合が多いのだが
 本作にはそのようなキャラはほぼ皆無。本田博太郎演じる「ギャオス捕獲」を命じる役人も
 自らの過ちを清く認めたり、中山忍演じる学者をそこまで軽んじていない。
 これは見ていてたとえ嫌なキャラでもひどい死に方すると後味が重くなるが、それが無いため
 目的のために皆が頑張る爽快感に直結すため、最後まで高潔な人ばかりで見ていて本当に気持ち良い。
 この人間ドラマの「気持ちよさ」があることで、例にあげるのもアレだが『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のような
 「人間パートが……ねぇ……」のようなことが無い。本作は特撮パートの足を引っ張るどころか
 逆に特撮パートの推進剤になるドラマパートの金子修介監督の女性の美しさを描くのがうまいところ含め最高だった。
 
 怪獣ものは観光映画としても機能するのだが、好きな長崎・福岡。三島などの 25年前を見られるのも楽しい。


●本作は1995年の作品だが今見てより日本人に突きつけるメッセージは鋭い。
 過去の文明人が残した負の遺産は、原発問題がより身近に感じられたこの10年を
 予見したかのようだし、過去の高度文明の話なども勾玉など日本の神話と海外の神話を
 良い意味でブレンドした要素も、ハリウッドゴジラやそれこど『ブロメテウス』とかにも通じるような面白さがある。

 この巫女的存在になる藤谷文子の女子高生も、包帯をして血が……のエヴァにも通じる
 官能的で性的な暗喩を感じさせる描写もうまい。

 そして今までどうしても『ゴジラ』の亜流的なガメラに、ゴジラを同じ核の恐怖と
 それによって生み出された怪獣の恐怖。そしてこれからそれと対峙しなければならない人々への宿命を
 初代ゴジラと重ねる終幕は見事としか言いようがない。


●今回の劇場鑑賞は今年トップクラスに満足できた。
 スペクタクルとドラマ。そして破壊衝動の満たされ具合など最高だった。
 4k盤も予約したが、このマスターを家庭で100%生かせることは無いので
 見られる状況できたら是非劇場で。 

      
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by suzuki-ri | 2020-11-29 11:57 | 映画 | Comments(0)

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