CGをどちらかというと多用する方で、画面の密度は高い方だと思うが
観客が位置関係や、どうしてこうなったの流れがちゃんとしているので
マイケル・ベイの『パールハーバー』に確かに似ているが、見ていて混乱しない。
ここはエメリッヒの節度だと思う。作品の出来不出来は置いておいて
ちゃんとカメラが据わっているのをこの監督には感じる。
4K UHDで家で見るのもいいが、やはり劇場のワイドスクリーン&大音響は楽しい。
正直家で見た時は微妙だと思ったが、劇場では娯楽映画としては楽しめた。
●本作はミッドウェイ海戦をメインで描いているのだが
実際はそれまでに至る戦線を断片的に描いているので
ミッドウェイ海戦をメインでじっくり見たいという方にはやや物足りないかもしれない。
ドラマは取ってつけたようなメロドラマが無いのは好ましいが
人物同士の信頼・友情などもやや淡白で、NHKの再現ドラマのような印象だ。
特に日本人キャストのシーンはあっさりしている。
上映時間は138分とやや長い部類だが
どうも3時間くらいあるものをカットしたような編集で、テンポは良く画面も引き付けられるのだが
ここぞという印象残るカットが少ない。
ただ、エメリッヒは『パトリオット』のような歴史物を描いた時は
メル・ギブソンがもし出ていなかったら相当あっさりした作りだった。
(おそらくメルが相当口出したことが予想させる)
ただそれは監督のある意味真面目さというか、SF作品を作った時には「嘘」なので
エモーショナルを煽るのはあまり周りを気にせず盛り上げるが
ある程度歴史にそったものには、必要以上に人工甘味料を加えないスタンスなのだとも。
●日本人キャストはちゃんと日本人としての撮り方・メイクやセリフで安心した。
私の中で傑作の『シン・レッド・ライン』でもセリフで不自然な箇所があり
こういうのがあると残念に思うのだが、これはとてもちゃんとしていて
怪しく不気味なアジア人な撮り方をしていないところにも
エメリッヒのドイツ人な生真面目さが出ている。
●エメリッヒは同性愛をカミングアウトしている。
だからというわけでは無いが、妙に彼の映画は優しいのだ。
たとえ敵だとしても、口汚く罵るわけではなく
相手は相手の立場がある……と毎回思わせてしまう。
それは例えばディザスター作品でも、相手の非より自分たちの至らなさを
少し感じさせる奥ゆかしさがどこか愛らしい。
[日本のAmazonでも輸入盤が安価で購入できます。残念ながら日本語字幕は未収録]
by suzuki-ri
| 2020-09-15 08:30
| 映画
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