人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画

ジマー節、どこへ行く -HANS ZIMMERのスコア-

ハリウッド映画のスコアといえば…ジョン・ウィリアムズや
惜しくも今年お亡くなりになったジェリーゴールドスミスの大ベテランから
ジェイムズ・ホーナーやアラン・シルベストリ…と沢山いるが
ここ10数年でもっとも各方面に影響を与えた人が

              ハンス・ジマー
ジマー節、どこへ行く -HANS ZIMMERのスコア-_b0020749_948221.jpg

[アクションスコアの頂点へ]
「レディオスターの悲劇」で有名なバグルスの一員だった彼は
その後フィルムスコアの方に進み
1987年ダスティン・ホフマン&トム・クルーズ主演の
「Rain Man」に起用される。
映画はアカデミーが喜びそうな話しだったか
ベタベタの雰囲気にならなかった要素の一つが
彼のスコアだった。シンセを使った、クールでどこか寂し気な
メロディとリズムの力強さでただの人情ものではないのを演出。

その翌年もオスカー作品の「Driving Miss Daisy」が話題になる。
レイン…より軽快さが増し、ちょっとコミカルな印象のメロディが
印象的だった。

次にRスコット監督の「Black Rain」を手掛ける。
日本を舞台にし国内スターも数多く出演し話題になったが
スコアも今までのアクション映画とは違ったアプローチで
印象に残った。「日本を知る為に演歌を聞きまくった」という
話しを聞いた事あるが、これがのちの「ジマー節」として
私や他の「患者」を生む事に。
和楽器を多用し、アクションはリズムとシンセ。
ドラマは和楽器で少し哀し気な曲がオーケストラで盛り上げる
いままでのこのテのジャンルとは違っていた。
彼のメロディの何処か「浪花節」的な臭いがするのは
この「Black Rain」のせいかもしれない。


某料理番組のおかげで有名になってしまった
「Backdraft」で映画のごとく「燃える音楽」を世に出す。
力強いリズムとコーラスの多用、オーケストラとシンセを重ねた効果
そして画面以上に感情を引き出すメロディが全開。
いわゆる「男の目から汗がでる」臭い所ギリギリの
強弱のついたスコアが圧巻だった。
逆に「True Romance」のようなロードムービーは
先の「Rain Man」の流れの、軽快な感じの優しいスコアで
おおまかに2つの方向性が出てくる。

この辺りから私は「映画の新作」の情報で監督と同じように
作曲者に注目するようになる。


そしてジマーは「The Lion King」でオスカーを手にする。
ディズニーアニメ映画にお決まりの「歌」が目立っていたが
アフリカの民族音楽を取り入れた、軽快な音楽と
重厚なシンセのマッチはまた新たな方向が出来た。
(のちの「Blackhawk Down」「Tears of the Sun」は
この流れに近いだろう)


1994年、アクションスコアの傑作が生まれる。
「Crimson Tide」トニースコット&ブラッカイマー組みの映画としては
不必要に派手にならず演技に力が入った良作だが
ジマーの「リズム、シンセ&オーケストラ、コーラス」の組み合わせは
1つの完成を見る。スピルバーグも彼に注目し
のちにドリームワークスの音楽部門に招かれる事に。
このスコアは今の、韓国のアクション映画のほとんどに
コピー&ペーストされ、日本のドラマのアクションでも
同じアプローチが今も続いている。

1996年、ニック・クレイニー・スミスと組んだ
「The Rock」(メインメロディ担当)、1997年単独作
「The Peacemaker」でアクションスコアの頂点になる。
エモーショナルなメロディはより激しく
画面より主張し過ぎの声もあった。
確かにこの2本。スコアだけ聞いたら
とんでもないスケールの映画を想い描いてしまう。
しかしこれが自分を含めファンは『クセ』になった。
「恋愛小説家」のような「軽快な方」も評価されていたが
やはり「次ぎはどんだけ鳴らしてくれるのだろう?」と
歪んだ期待もしてしまっていた。


[静の良さが出てくる]
90年代後半になると「ジマーっぽい」スコアが巷に溢れ
悪い意味で「ジマーっぽいなぁ」って感想も出始めた。
ジョン・パウエルやマーク・マンシーナ、
ハリー・グレックソン・ウィリアムズの「子分」から
トレイバー・レイビンや、雄大な音楽だった「ラストオブモヒカン」の
トレーバー・ジョーンズまで、同じアプローチをくり返した。

1999年、伝説のテレンスマリック作「The Thin Red Line」は
日本の楽器やシンセの多用はあったが「静」の魅力に溢れていた。
キネマ旬報では「ジマーは戦場の風になった」と表され
また新たな方向性が出て来た。前のような分かりやすいメロディは
影を潜め時には傍役に回り、映画のトータルを見るようになった感があった。

Rスコットの復活作「Gladiator」からこのコンビの快進撃が続く。
「ホルストの惑星のまんややん」な曲もあるが
音に負けないスコットの画面とのマッチングは最高。
「Hannibal」「Matchstick Men」と来て最新作の
「Kingdom of Heaven」でも組む予定だ。

スコット以外の仕事では
「Pearl Harbor」、「The Last Samurai」等でシンレッド…+アクションの流れ
「The Ring」「The Pledge」は完全に画面効果の補佐と
静かなラインを多くこなす。ジャックニコルソンや
ショーンペンとも交友があるらしく
小品を余裕持ってやっているようだ。

賑やかな「Pirates of the Caribbean」はクラウス・バデルトの
バックにまわり、過去のジマー・アクションスコアのサンプリングに。
まとまりはないが「楽しいスコア」になった。
(K-19も鳴らし過ぎだが、音楽単体としては好き)

ただ余り良く無い仕事もあり「Mission: Impossible II」や
「Thunderbirds」等、モトネタありのアレンジは
「やっつけ感」が強く、特に先のはパート1の
ダニー・エルフマンの完成度には及ばない。
後者もオリジナルへの興味は薄いようだ。

今年は「Shark Tale」や「恋愛適齢期」などの
軽快路線が多く期待の「King Arthur」は
期待外れのやっつけ感があった。
相性のいいスコットの新作に期待。



[番外編]
印象が強くのこる彼のスコア。各製作関係でも同じように
思っているようで、映画の予告編では多用されている。
あの「ジュラシックバーク」はウィリアムズの
素晴らしいスコアがあるのにも関わらずバックドラフトを使っていたし
「インディペンデンス・デイ」のクリムゾンタイド。
「ウィンドトーカーズ」のグラディエーター(+ザ・ロック?)
等、本チャン・スコアよりマッチしていたのもある。

某料理番組以外にも、警察ドキュメントや
世界丸見え(これは「U-ボート」「ライトスタッフ」もしょっちゅう)
バラエティ等、良く使われている。
たまに「なんだ!この使い方!!」ってのもあるが。


[最期に]
今年はまだ「彼の力の入った」スコアが聴けていない。
それは「力の入った」事の意味。部下も力のある人が増え
その結果「スチームボーイ」のような傑作も出来たりするのだが
「彼自信の」が無い。
『静かに燃える』曲、『画面と相乗効果が出る曲』
そして『ジマーらしい曲』を2005年に聴きたい。
名前
URL
削除用パスワード
by suzuki-ri | 2004-10-13 09:40 | 映画 | Comments(0)

リドリー・スコットを中心に映画やBlu-ray、ZZ-R(休み)などページです。 FBでリドリー・スコット作品の海外・国内で購入できるBlu-rayを沢山紹介した「Ridley Scott作品のBlu-ray」もやってます。


by suzuki-ri
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31