●「エイリアン:コヴェナント」を公開より早く見た。職場の友人から試写を誘ってもらったのと
北米盤4K UHDが一部店舗で扱っており、買ったら北米版の4K UHDには日本語字幕も入っていたから。
(北米盤『プロメテウス』の4K UHDも日本語字幕入り)
●先に言ってしまう。「コヴェナント」は宇宙版「悪の法則」のような映画だった。
主人公や周りの人が、不条理で過酷、時には残酷な仕打ちに合う事はもうすでに作品が始まった時点で決まっており
その不条理さは最期まで続く。そこに逃げ場はなかったのだ。
宇多丸さんがラジオで「悪の法則」の話をした時に「プロメテウス」の事も話していたが
人類は宇宙…いや人類の存在自体が詰んでいるんだよと。
「プロメテウス」で愚かにも「神にお近づきになりたい。あわよくば生きながらえたい」と願った
ウェイランドはエンジニアに無残にも撲殺される。
そして本作はそのエンジニアにすら災いをもたらすような、とんでもないものを人類は作り出して
自らしっぺ返しをくらう話である。
そこにはキャメロンが作り出した、生命体としてのツリーを作っているエイリアンは存在しない。
エイリアンと人間の母としての対決を「エイリアン2」はエネルギッシュに描いていたが
そのような娯楽的カタルシスはない。
じゃぁこの作品には最期まで救いがないのか?そこは見てのお楽しみだが
「悪の法則」のキャメロン・ディアス演じるマルキナのような存在が、後味最悪なのに
絶妙なカタルシスを感じさせてくれる。そしてそれは人類にとって最悪な出来事でもあるが
ある戦いに勝利したものが、ワーグナーの曲をバックに勝利の行進をするのだから(町山さんもそうラジオで語っている)
とにかくもうこの世界観には、ティーザーのチラシのように「RUN 逃げ…」なのだが
逃げられないのである。その運命の残酷さ。そしてエイリアン・シリーズでも
トップクラスの残酷描写に痛めつけられる楽しさを存分に体感できる。
リドリーは宇宙に地獄を作りたかったのだ。
●美術的スケール感は若干「プロメテウス」の方が大きいようにも感じたが
話の裏側のスケールと、ゆがんだ目的は末恐ろしくなるくらいだ。なぜそこまで神話などと結びつけるように
脚本を練ったのか関心するばかり。
「オデッセイ」で人類は理性と学問とユーモアがあれば宇宙でも生きていけると
賛歌したしたリドリーとは思えない、恐ろしくも美しい世界観を見せて絶望させてくれる。
やっぱりリドリーは「鬼リドリー」が似つかわしい。
●ここから先はまた劇場公開に合わせて追記しようと思うが
日本でも関連書籍の発売が決まった。北米版で出ていたアート&メイキングや
メイキング、Cinefexの特集などで見る事ができるのは嬉しい。
CGを使ってはいるが、結構な部分をアナログで撮影しているのでメイキングも面白い。
●未公開シーンも幾つかあるが、まず劇場に行く前には動画サイトに上がっている
「最期の晩餐」的なクルーのドラマと、ディビッドとショウが「プロメテウス」の後に
どうなったかの本編に含まれない映像は見るとより楽しめる。
●個人的には満足出来る作品だった。興行的には伸び悩んだ作品だったが
北米での評論家などからは70%ほどは評価している作品で
作品の裏側をどれだけ突っ込んで見るかで満足後が変わる作品であることは間違いない。
ぜひこの後も作って、パート1につなげていただきたい。
by suzuki-ri
| 2017-08-15 09:51
| リドリー・スコット関連
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