映画

沈黙 -サイレンス-

●マーティン・スコセッシの、本人が「年十年前から温めていた企画」の映画は
 個人的に相性が良くない事が多い(ジャング・オブ・ニューヨークなど)が
 「沈黙 -サイレンス-」は個人的に静かに感動できた。
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 まだ公開間もないので内容はあまり触れ無いようにしますが、これからご鑑賞の方はご注意を。
 思った事などを中心にバラバラと書く。

 撮影が「ブロークバック・マウンテン」「バベル」「ラスト、コーション」などをした
 ロドリゴ・プリエトなので、美しいながらも、「ラスト・サムライ」的なケレンは少なめ。
 ただ本作の撮影は日本ではほぼ行われずに、台湾だったのが色々とあったのだろうけれど残念。

 本作で弾圧されるキリシタンの中で、藤に苦しむキチジローを窪塚洋介が演じているが
 窪塚洋介は「狂気の桜」などでも、自分のイデオロギーをそのまま出すタイプなので
 苦手な方も多いかもしれ無いが、この作品ではスコセッシという大監督に見出された中で
 その自らの思想に苦しむところは、実際のナイーブな本人と重なるためとてもいい役だったと思う。

 逆に海外では評判の弾圧をすすめる井上筑後守を演じる、イッセー尾形の役柄は
 やや時代劇の悪代官タイプそのままだったように思うのが。

 主人公のロドリゴ神父を演じる、アンドリュー・ガーフィールドは
 メル・ギブソンの「ハクソー・リッジ」でも宗教的な理由で戦いを拒否する
 衛生兵を演じているが、見た目はジム・カヴィーゼルのキリストのような
 雰囲気を醸し出しており、そこに目力の色気も感じられるのがいい。

 フェレイラ神父を演じるリーアム・ニーソンもキリストなイメージを
 見せてくれるが、この人はメンター的な役柄も多く、宗教を扱った映画といえば
 「キングダム・オブ・ヘブン」でもゴッドフリー・オブ・イベリンを演じている。

 それにしても、このところ役者としての塚本晋也監督が
 どの作品も素晴らしいのだが、今回も宗教を捨てられずにハリツケにあう
 やせ細った姿は説得力と無常感が素晴らしく「野火」でも一番輝いていたが
 昔の日本人イメージとしての存在感がいい。


 約2時間40分ほどあるが、3時間あったスコセッシの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の方が
 短く感じるくらい、淡々とした描写が続くので娯楽映画として見に行ったら
 そりゃ大変な苦痛かもしれ無いが、信念とは何か? 信仰とはなにか?
 そして、国の上が変わる事で個人の思想すら曲げる事を強要する時代と
 今がちゃんと進化してきているのか? 見つめ直すには格好の作品だと思う。
 


   
Commented by TETU at 2017-01-23 15:13 x
「沈黙」は以前にも篠田正弘監督で映画化されてますが、この作品の「国と宗教」を扱った普遍的なテーマが映像作家を引き付けてやまないのでしょうね。ただ、普通はこういったテーマだと戦争ものになってしまうのが常ですが、それを信仰への弾圧と改宗に的を絞り、人間の生き方の問題をしっかりと描いたところが他の通俗的な娯楽作品と一線を画してるところだと思います。遠藤周作原作の映画は他にも奥田瑛二主演の「海と毒薬」といった作品もありましたが、これも人間の命の尊さを描いた良い作品でした。
私は映画は基本的には娯楽を目的にしてるものだと思いますから、大部分が娯楽作品でもいいと思いますが、たまにはこういった純文学作品もあってもいいかなとも思います。正直、最近の漫画の原作の映画やドラマの氾濫には辟易してるのも事実です。
Commented by suzuki-ri at 2017-01-23 19:51
TETUさん:宗教を扱った映画で、最後に幸せな方向にいった映画が
あんまりないのも皮肉ですが、遠藤周作作品や他にも日本の文学や歴史物も
悲しいかな海外の作家が制作したほうがクォリティ高い場合が多いですね。
「海と毒草」は私も好きな作品です。学生の時に教師から是非見るように言われ
白黒作品で「米軍捕虜を解剖」というショッキングな内容と、演技に惹きつけられました。

重いテーマですが「沈黙」は結構お客さんが入っていて
見た後の空気も重かったですが、たまたまか学生らしき年代の方が多かったのも
興味深かったです。私の時のように、教師から勧められたのかもと。
Commented by desire_san at 2017-02-13 10:07
こんにちは、
私も映画『沈黙-サイエンス』を見てきましたので、詳しい鑑賞レポートを読ませていただき、映画『沈黙-サイエンス』の感動が甦ってきました。江戸時代のキリスタン弾圧の時代を、キリスタンのみならず弾圧する側の井上筑後守や通辞など侍たちも飲み込んでいく巨大な蟻地獄のように描いているように感じました。この映画の配役は絶妙で、特に弾圧される農民を演じた笈田ヨシと塚本晋也は、堂々とした風格のある演技で、気高く感動的なほど魅力があり、映画に深みを持たせていました。窪塚洋介が演じたキチジローも説得力のある熱演でした。

私も『沈黙-サイエンス』を観て、この映画の魅力と現代人はこの映画から何を学べるのかを整理してみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。



Commented by suzuki-ri at 2017-02-13 11:29
desire_sanさん:早速ブログを拝見させていただきました。とても細かく宗教や
役者さん(特に窪塚さんのことなど)を考察されていて、私もまたこの作品を
劇場で見たくなりました。

私は小学生の時に福岡に転勤で住んでいたことがあり
修学旅行は長崎でした。
親が転勤先で友達ができればと、カブスカウトや同じ社宅で日曜学校行ってる人などと
交流もしていたのですが、たまたまその
1つがイエズス会の関係のところで、ほんの少しいろいろな事を教えられたりしました。

宗教本来の「実生活で転んだものを受け入れる包容力」がなくなっている危機感を
本作は問うているようにも感じました。 
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by suzuki-ri | 2017-01-23 10:13 | 映画 | Comments(4)

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