人気ブログランキング | 話題のタグを見る

リドリー・スコット関連

2度目が楽しめる「エクソダス:神と王」そして鬼リドリー変わらず(1)

リドリー・スコットの最新作は「モーゼの十戒」の話だが
初見と再見では印象が大きく変わった。
(『十戒』の話しは有名ですが、予備知識なしに見たい方は
 ここから下はネタバレ要素も多いのでご注意)
これは「キングダム・オブ・ヘブン」の初回劇場公開版を
見た時にも似ていたが、個人的に思う事などを羅列。
2度目が楽しめる「エクソダス:神と王」そして鬼リドリー変わらず(1)_b0020749_1544320.jpg

序盤。いきなり「ヒッタイト人」との戦闘から始まる。
モーゼ、ラムセスの関係はその後のドラマで語られるのだが
これには驚いた。「みんな知っているでしょ?」的省略だが
IMAX 3Dで見るこの戦闘シーンは凄まじく、スピード感と
あらゆるカメラワーク(15台同時使用したとも)で
カット割こそ細かいものの、動作の連続性が素晴らしい。
弓矢はまるで機銃のえい光弾のような勢いで飛ぶ!
「キングダム…」と「ブラックホーク・ダウン」を合わせたような
短い尺ながら素晴らしい迫力だった。
このテのスペクタクル撮ったら、リドリーは超一流なのを再確認。


ここが終わり、モーゼの出生の秘密-追放-結婚までも
「知ってるでしょ?!」な省略でトントンと進む。
ドラマが盛り上がる前にハイ次なので
スペクタクルも無くドラマも上がらないので
初見では退屈に感じる所だ。

しかし2回目の時は、その後のドラマの結果が分かっているのと
自分内での予備知識との整理も出来るので
すんなり見られるし、モーゼの奥さんも美人なので
見ていて楽しいが
ある天災でモーゼは「神」と出会う。それがヤハウェなのか
幻影なのかは曖昧に見せるが、泥水から浮かび沈むのは
「地獄の黙示録」でも描写された「そっちの世界」の演出だ。


この映画が恐ろしいのはここからだ。
モーゼはラムセスに宣戦布告。ラムセスはヘブライ人の虐殺で報復し
モーゼは奴隷を率いてゲリラ戦法を仕掛ける。それも
王宮だけでなく一般市民まで巻き込んで!
疲弊したエジプトの民の「民意」でエブライ人の解放を
迫るためだが、完全に「テロリスト化」する。
イスラム国のニュースが飛び交う昨今には
とても冷静に見ていられない描写だ。

ただこの戦法では一世代かかると「神」は宣言。
まかせろ…のひと言から、阿鼻叫喚の「エジプト・十の災」が巻き起こる。
大量のワニが漁民を襲い、その血とそこにたまった汚泥をかき混ぜたため
赤潮が発生。魚と農作物は壊滅的に。酸素が減った水から逃れるため
大量のカエルが街に押し寄せるが、その死骸に蛆がわき蠅大発生。

この描写は「本当にPG-13(北米での指定)なの?」という残酷で
グロテスクで気色の悪い画面が3Dで襲ってくる最悪の展開。
リドリーは「神」の行いではなく天災として描くが
よりエグく残酷に訴えて来る。
モーゼは心痛めるが神の行いは止まらずエスカレートし
疫病-ヒョウが降りバッタの大発生。
極めつけが「子羊の血」を入口に塗らなかった家の
エジプトの子供が大勢死ぬという最悪の行いをする。

なぜ「子羊の血」なのか?
 ヤハウェが
 「あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。
 血を見たならば、わたしはあなたたちを過ぎ越す。
 わたしがエジプトの国を撃つとき
 滅ぼす者の災いはあなたたちに及ばない」

約束したからだが
昔教会で聞いた時は、血に抗菌作用があって
それが疫病から子供を救ったのではないか。
さすがに一晩でそれが完結するわけではないが…と話していた。
他にもヘブライの子供は劣悪な環境にいたため
ある病気の抗体が出来ていたが、エジプトの子供にはそれが無かった。
アブ発生の時に治療した薬の副作用だった…など色々な節を教えてくれた。
 
それにしても、ハリウッド映画でここまで露骨に
子供が大量死する映画を今の時代に作るリドリーは…鬼である。
リドリーは宗教が戦争の引き金になる作品を何度も作ってきた。
「神」という象徴がする事は、人々を幸せにするのではなく
実は無差別な災いばかりではないか? 過去に印された書物にも
「神に救われた」より「神がお怒りになった。神がもたらせた…」が
いかに多いか。それを皮肉っているようにしか思えない。

「プロメテウス」「悪の法則」と神なんか信じたって…という
全く救いのない話を続けて3本撮るこの老監督。
凄いとしか言いようがない。


ちょっと長くなってしまいそうなので
後半の「出エジプト」や、なぜこの映画がハリウッドで嫌われたか。
成田と浦和の両IMAXで見た映画館自体の事などは
まだ後日続きを書きます。
Commented by TETU at 2015-02-02 15:45 x
やはりIMAXで観なければ、とても迫力は伝えきれないと思いますが、予告編で心配だった解像度不足とかはだいじょうぶでしたか?6K撮影らしさなどもありましたか?

私は無宗教の方なので、リドリーの神に対する皮肉などはよくわかるような気はしますが、これではなるほど欧米では非難が渦巻くかもしれませんね。日本人などは割に平気かもしれませんけど(^^)。
Commented by osamu713 at 2015-02-02 18:15
TETUさん:成田IMAXで見た時は、エジプトの全景で予告の時と同じような
解像度不足と画面の暗さを感じました。スクリーンの大きさもあって2K上映は厳しいのかもしれません。浦和はIMAXスクリーンが小さめなのですが、成田よりはシャープで明るかったです。SONYの4Kプロジェクターの劇場ならどう変わるか、時間があれば比べたいと思います。
私も特にどこの宗教に入っているわけではないのですが
教会に行ったりするのが好きで、調布のある教会ではよく「プリンスオブエジプト」の曲を歌ったりしていました。おそらくその劇場は「エクソダス」を見に行きましょう!と言って親子でトラウマになるかもしれません。別の調布の教会で「パッション」を皆で見に行きましょう!よりは良いでしょうけれど。
名前
URL
削除用パスワード
by suzuki-ri | 2015-02-02 15:05 | リドリー・スコット関連 | Comments(2)

リドリー・スコットを中心に映画やBlu-ray、ZZ-R(休み)などページです。 FBでリドリー・スコット作品の海外・国内で購入できるBlu-rayを沢山紹介した「Ridley Scott作品のBlu-ray」もやってます。


by suzuki-ri
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31